
院長:表川お気軽にご相談ください!


こんにちは、滋賀県守山市にある大樹整骨院院長の表川大樹です。先日、こんなことをおっしゃる患者さんがいらっしゃいました。「整形外科の先生に『太ももの筋肉を鍛えなさい』と言われたけど、スクワットをしていいのか悪いのか、誰に聞いても答えが違うんです…」と。
この一言、すごくよくわかります。実際、変形性膝関節症を抱えている方がスクワットについて調べると「やった方がいい」「いや膝が悪化する」という正反対の情報が混在していて、混乱するのは当然なんです。


「膝の軟骨がすり減っていると診断されたのに、スクワットなんてほんとうにしていいの?」と思う気持ち、ごもっともです。ただ、正しいやり方を知ることで、膝への負担を最小限にしながら必要な筋力をつけることは十分に可能です。
「膝が痛いのに、なぜわざわざ動かすの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、これには大切な理由があるんです。変形性膝関節症の方にとって、太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることは、膝関節の安定性を高め、日常生活での膝への負担を減らすためにとても重要な取り組みなんです。
膝関節は、骨と骨が直接ぶつからないようにするためのクッション(軟骨)がすでに薄くなっている状態です。そのため、関節を支える「筋肉のコルセット」がしっかりしていないと、歩くたびに骨同士がこすれやすくなってしまいます。つまり、筋肉が弱いほど、軟骨への負担が増えてしまうということなんです。
だからこそ、「痛いから安静に」というだけでは根本的な解決にならないケースが多いのです。適切な動きを取り入れながら、膝を守る筋肉を少しずつ育てていくことが大切になります。
変形性膝関節症の方がスクワットをしていいかどうかは、「一律にOK」でも「一律にNG」でもありません。その方の症状の程度や、どんなフォームで行うかによって、結果はまったく変わってきます。
大切なのは、「今の膝の状態に合ったやり方かどうか」という視点です。まず、次のような状態のときはスクワット系の動作は一旦控えていただいた方が安全です。
一方で、動き始めや立ち上がりのときだけ痛みがあり、歩いていれば少し楽になる、という方や、整形外科でグレードⅠ〜Ⅱと診断された段階の方は、正しいフォームと範囲を守ることで、スクワット系の運動に取り組むことが可能です。
ここからは、変形性膝関節症の方が取り組む際に特に意識してほしいポイントをお伝えします。「スクワット=膝を深く曲げるもの」というイメージが強い方も多いのですが、実は膝を深く曲げなくても、ちゃんと筋肉に刺激を与えることはできます。
変形性膝関節症の方にとって、膝を深く曲げることは軟骨への負担をぐっと増やしてしまいます。目安は膝の曲げ角度を45度以内、つまり「椅子から立ち上がるくらいの浅さ」に留めることです。フルスクワットや、しゃがみ込むような動きは避けてください。
足を肩幅くらいに広げて、ゆっくりと腰を落としていきます。このとき、膝がつま先よりも前に出ないように気をつけましょう。つま先とひざが同じ方向を向いていること、かかとが浮かないことも大切なポイントです。
素早くドスンと腰を落とすと、それだけで膝に大きな衝撃が加わります。呼吸を意識しながら、3〜5秒かけてゆっくり腰を下ろし、また3〜5秒かけて戻る。このゆっくりした動作が、膝への負担を大幅に減らしながら筋肉にしっかり効かせるコツです。
「立った状態でスクワットをするのが怖い」という方には、椅子を使った方法がおすすめです。椅子の背もたれに軽く手を添えながら行うことで、バランスを保ちやすくなりますし、万が一バランスを崩しても安心です。また、「椅子に座った状態からゆっくり立ち上がる」という動作そのものも、大腿四頭筋に十分な刺激を与えるよい運動になります。
運動中に膝のズキズキとした痛みが出てきたら、それは「今日はここまで」というサインです。「少し違和感があるくらい」は許容範囲ですが、ズキズキとした痛みや、運動後に膝が腫れたりする場合はすぐに中止してください。翌日になっても痛みが引かない場合も、負荷を下げるか、休むことを優先してください。
「スクワットをやってみたけど、やっぱり膝が痛くなってしまった」という方でも、あきらめる必要はありません。大腿四頭筋を鍛える方法はスクワットだけではないんです。
床に仰向けになり、片方の膝を立てた状態で、もう一方の足をまっすぐ伸ばしたまま30cmほど持ち上げます。これを5秒キープして、ゆっくり下ろす。これを左右10回ずつ行います。この運動は膝に負担をかけることなく、太もも前面の筋肉を鍛えられる方法として、リハビリの現場でも広く使われています。
椅子に座った状態で、片方の足をゆっくりまっすぐ伸ばして、5秒間キープしてから下ろします。テレビを見ながらでも取り組めるので、日常生活に組み込みやすいのが特徴です。膝関節を直接曲げ伸ばしすることなく、太もも全体の筋力を維持・向上させることができます。
壁を背にして立ち、背中と壁の間にスペースを保ちながら、ゆっくりと壁に沿って腰を下ろしていきます。膝の角度が90度になる前に止め、その姿勢を数秒間キープします。壁があることで体の重心が安定するため、通常のスクワットよりも膝への負担が少なく済みます。
変形性膝関節症の方が運動する際に、特に気をつけてほしいことをまとめてお伝えします。
| 避けた方がよい動作 | 理由 |
|---|---|
| フルスクワット(深いしゃがみ) | 膝に体重の5〜8倍以上の負荷がかかる |
| 膝をねじりながら動く | 軟骨と半月板に大きなダメージが加わる |
| 勢いをつけて素早く行う | 関節への衝撃が増し、炎症を起こしやすい |
| 痛みを我慢して続ける | 症状の悪化・炎症の長期化につながる |
| 毎日高頻度で行う | 回復時間が不足し、逆効果になることがある |
「痛みを乗り越えれば強くなる」というのは、変形性膝関節症の場合にはあてはまりません。痛みはあくまでも体からの大切なメッセージです。そのサインを無視せず、上手に付き合いながら取り組むことが、長く続けるためのコツです。
「筋肉をつけると膝の軟骨が再生する」という話を信じている方もいらっしゃいますが、残念ながらそれは誤解です。一度すり減った軟骨は、現時点の医学では元に戻ることはありません。筋力トレーニングの目的は、軟骨を再生させることではなく、「膝関節を筋肉でしっかり支えることで、これ以上の進行を抑えること」と「日常生活での痛みや不自由さをやわらげること」にあります。
この点を正しく理解したうえで取り組むことが、焦りや誤った期待を生まないためにも大切です。「思ったほど早く良くならない」と感じて自己流の負荷をかけてしまうと、かえって状態を悪化させてしまうこともあります。焦らず、継続することを一番の目標にしてください。
ここまで運動についてお話してきましたが、実は変形性膝関節症の原因はひとつではないんです。加齢による軟骨の摩耗だけでなく、体の重心のかかり方、股関節や足首の動きの問題、骨盤のゆがみ、さらには過去のケガの影響など、さまざまな要因が複雑にからみ合っています。
ですから、自宅での運動で改善が感じられない場合、あるいは「どのくらいの負荷が自分に合っているのかわからない」という方は、専門家による検査を受けてみることをおすすめします。体の全体像を正確に把握することで、自分に本当に必要なアプローチが見えてきます。
私が大樹整骨院でいつも大切にしているのも、その「原因の特定」です。膝だけを診るのではなく、姿勢・歩行・関節・筋肉・神経という5つの視点から全身を丁寧に検査し、その方それぞれに合ったアプローチを考えます。同じ変形性膝関節症であっても、原因が違えば対処法も変わってくるからです。
運動と並行して、日常生活の中でできる膝まわりのケアについてもお伝えしておきます。
椅子に浅く座り、片方の足をまっすぐ伸ばして、上体をゆっくり前に傾けます。太もも裏(ハムストリングス)が伸びる感覚があればOKです。20秒キープして、左右それぞれ3回行います。ハムストリングスが硬くなると、膝関節の前側に過度な負担がかかりやすくなるため、柔軟性を保つことはとても大切です。
壁に手をついて立ち、片足を後ろに引いてかかとを床につけたまま、ふくらはぎを伸ばします。20秒キープして左右3回ずつ。ふくらはぎは「第二の心臓」とも呼ばれるほど血液循環に関わる大切な筋肉です。柔軟性を保つことで、足全体の筋バランスが整い、結果的に膝への負担軽減にもつながります。
立ち上がるとき、階段を降りるとき、ちょっとした動作の積み重ねが膝への負担を左右します。立ち上がるときは手を使って体重を分散させること、階段は手すりを活用すること、長時間同じ姿勢で座り続けないことなど、日々の小さな習慣が膝を守ることにつながっていきます。
「スクワットをしていいかどうか」という一つの疑問の裏には、「手術はしたくない」「痛みをこれ以上悪化させたくない」「日常生活をもっと楽にしたい」という切実な思いがあると、私はいつも感じています。
変形性膝関節症は、正しく向き合えばきちんと改善の道があります。「もう年だから仕方ない」とあきらめてしまわずに、ぜひ今の自分の体の状態を正確に知るところから始めてみてください。歩くのが楽になった、階段を手すりなしで降りられるようになった、そんな変化を実感された患者さんを、私はたくさん見てきました。
膝のことで不安なこと、わからないことがあれば、どうかひとりで悩まないでください。いつでも気軽にご相談いただけると、とても嬉しいです。あなたの膝が少しでも楽になる毎日を、一緒に目指しましょう。
【監修:柔道整復師・鍼灸師 表川大樹】



