
院長:表川お気軽にご相談ください!


こんにちは、滋賀県守山市にある大樹整骨院院長の表川大樹です。今日は、多くのランナーやスポーツを楽しむ方から寄せられる「アキレス腱の痛み」について、詳しくお話しさせていただきます。
先日、40代の男性患者さんがこんなことをおっしゃっていました。「朝、ベッドから立ち上がった瞬間、かかとの後ろにズキッと痛みが走るんです。走り始めは痛いんですが、しばらくすると和らいで…それで大丈夫だと思ってそのまま走り続けていたんですが、だんだん悪化してきて」と。
その方は3か月後にマラソン大会を控えていて、とても不安そうな表情をされていました。あなたにも、似たような経験はありませんか?
アキレス腱炎は、放っておくとどんどん深刻になっていく可能性があります。でも、なぜ痛みが出るのか、その理由をきちんと理解することで、正しい対処ができるようになります。


アキレス腱まわりのトラブルは原因がひとつではなく、いくつかの要因が重なって起こることがほとんどです。だからこそ、その方の体をしっかり検査して、何が本当の原因なのかを見極めることがとても大切だと感じています
アキレス腱とは、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ、人体の中でもっとも太くて強い腱です。歩く・走る・跳ぶといったあらゆる動作に深く関わっています。このアキレス腱に炎症が起きた状態を「アキレス腱炎」といいます。炎症といっても、最初は「なんとなく違和感があるな」という程度のことが多く、そのまま放置されてしまうケースが非常に多いのが現状です。
症状の初期には、動き始めの数分だけ痛くて、あとは和らぐという経過をたどることがよくあります。これは体が温まることで組織が柔らかくなり、一時的に痛みが引いているだけで、腱へのダメージは着実に蓄積されている状態です。「動けば治る」というのは残念ながら正しくなく、そのまま続けると慢性化してしまうことがあります。
また、朝起きてすぐの「最初の一歩」が特につらいという方も多いです。これは、寝ている間に腱が短い状態で固まってしまい、体重をかけた瞬間に一気に引き伸ばされることで痛みが出るためです。「歳のせいかな」と思いがちですが、年齢だけが原因ではありません。
当院にアキレス腱の痛みで来院される方のお話をうかがっていると、「なぜ自分がこうなったのか全くわからない」とおっしゃる方がとても多いです。原因がわからないまま湿布を貼って、また痛くなって、という繰り返しを経験されている方もいます。アキレス腱に炎症が起きる原因は、実はひとつではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。以下にその代表的なものをご説明します。
もっとも多いのが、いわゆる「使いすぎ」です。マラソン大会に向けて急に走る距離を増やしたり、久しぶりにスポーツを再開して張り切りすぎてしまったりすることで、アキレス腱への負荷が一気に高まります。腱は筋肉と比べて血流が少なく、修復に時間がかかる組織です。ダメージが蓄積するスピードが、回復するスピードを上回ったとき、炎症が生じます。
「先週から急に練習量を増やしたら、かかとが痛くなってきた」という方は、まさにこのパターンです。体が悲鳴を上げているサインとして、痛みが出ていると考えてください。
ふくらはぎの筋肉(腓腹筋・ヒラメ筋)が硬くなると、歩いたり走ったりするたびにアキレス腱に過剰な引っ張りの力がかかり続けます。これが繰り返されることで、腱の微細な損傷が積み重なっていきます。デスクワークが多い方や、運動前後のストレッチを省略しがちな方は、ふくらはぎが知らないうちに硬くなっているケースが多いです。
「ストレッチはしていない」「座り仕事が多い」という方は、ふくらはぎの硬さが痛みの一因になっているかもしれません。
足のアーチが低い「扁平足」や、歩くときに足が内側に倒れすぎる「過回内」という状態があると、アキレス腱に偏った力がかかり続けます。こういった足のかたちや歩き方のくせは、本人がまったく気づいていないことが多いです。
当院では歩行の状態を丁寧にチェックしていますが、アキレス腱に痛みを抱えている方のなかに、こうした歩き方のくせが見られるケースは決して少なくありません。足のかたちや歩き方のくせは、適切に評価することで改善へのアプローチが大きく変わります。
クッション性が低くなった古いシューズや、足のかたちに合っていないシューズを使い続けることも、アキレス腱への負担を高める原因になります。特にランナーの方は、シューズの寿命(一般的に走行距離500〜800km程度)を過ぎても使い続けているケースがあります。「シューズは新しいから大丈夫」と思っていても、足のかたちに合っていなければ問題になることもあります。
アキレス腱炎は30〜50代に多い傾向があります。これは、年齢を重ねるにつれて腱の柔軟性が低下し、血流も減少するため、ダメージを受けたときの修復力が若いころより低くなるからです。「40代になってから急に体が変わった気がする」とおっしゃる方は多いのですが、これは加齢による自然な変化のひとつです。
ただ、加齢だから仕方ないと諦める必要はまったくありません。体のしくみを理解したうえで正しくアプローチすることで、十分に改善できます。
アキレス腱の痛みは、足だけの問題ではないことも多いです。骨盤のゆがみや腰椎の状態が悪いと、足への荷重バランスが崩れ、特定の部位に集中した負荷がかかり続けます。当院に来られる方のなかにも、アキレス腱そのものより、体全体のバランスを整えることで症状が大きく改善したケースが数多くあります。
アキレス腱の痛みには「動いているうちに和らぐ」という特徴があるため、多くの方が「大したことはない」と判断してしまいます。しかし、これは非常に危険なパターンです。痛みが引いているのは炎症が治まったわけではなく、体が温まって一時的に血流が増えているためであることが多いです。
そのまま負荷をかけ続けると、腱の内部で変性(劣化)が進んでいきます。変性が進んだ状態のアキレス腱は非常にもろくなり、最悪の場合アキレス腱断裂という深刻なケガにつながることもあります。断裂した場合は手術が必要になるケースもあり、復帰までに半年〜1年以上かかることも少なくありません。
「もうちょっと様子を見ようかな」と思っている方に伝えたいのは、早く対処するほど回復までの期間は短くなるということです。痛みをそのままにしておくことにメリットはありません。
かかと周辺の痛みが全てアキレス腱炎というわけではありません。似たような痛みを引き起こす状態がいくつかあり、原因によって対処法がまったく違います。ここでは代表的なものを整理してみます。
| 症状・状態 | 痛みの場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| アキレス腱炎 | かかとの後ろ〜アキレス腱中央 | 動き始めに痛く、温まると和らぐ |
| アキレス腱付着部炎 | かかとの骨との付着部 | かかとの骨のあたりを押すと痛む |
| 踵骨滑液包炎 | かかとの後ろ、靴に当たる部分 | 靴を履くと特に痛む |
| 足底筋膜炎 | かかとの裏側〜土踏まず | 朝の最初の一歩でかかとの裏が痛む |
このように、痛みの場所や特徴によってまったく異なる原因が考えられます。自己判断で「アキレス腱炎だろう」と決めてしまうと、見当違いのケアを続けることになりかねません。正確な評価と検査がいかに大切かがわかっていただけると思います。
アキレス腱の痛みは誰にでも起こりえますが、特になりやすいといわれるパターンがあります。自分に当てはまるものがないか、確認してみてください。
運動前後のストレッチをほとんどしない方は、ふくらはぎや足首まわりの柔軟性が低くなりやすく、腱への負担が蓄積しやすい状態にあります。また、練習メニューを急に増やしたり、久しぶりにスポーツを再開したりした方も注意が必要です。
デスクワークが多く、日常的にあまり歩かない方も意外と要注意です。筋肉が衰えると腱だけに力が集中してしまうことがあります。さらに、かかとの高い靴や硬いソールの靴を日常的に使っている方も、アキレス腱に慢性的な負担をかけやすいといわれています。
それから、過去に足首の捻挫をしたことがある方も注意が必要です。捻挫によって足首まわりの筋肉や靭帯の働きが変化し、アキレス腱への負担パターンが変わってしまうことがあるからです。「昔に捻挫したことがある」という方は、その後の体のバランスの変化を評価してみる価値があります。
「まずは自分でできることをしたい」という気持ちはよくわかります。実際に、セルフケアが症状の悪化を防いだり、回復を助けたりすることはあります。日常的に取り組めるケアとして、以下のようなことが参考になります。
運動の前後にふくらはぎをゆっくりと伸ばすストレッチを行うことは、腱への負担を軽減するうえで効果的です。とくに朝起きてすぐ動く前にベッドの上でつま先を引き寄せるような軽いストレッチをするだけでも、最初の一歩の痛みが和らぐことがあります。
痛みが強い日は無理に運動せず、アイシング(氷や保冷剤をタオルに包んで10〜15分程度冷やす)を行うことも炎症の悪化を抑えるのに役立ちます。また、かかとが靴の中でしっかりホールドされ、クッション性のあるシューズを選ぶことも大切です。
ただし、セルフケアはあくまでも「今以上に悪化させないための手段」です。すでに炎症が起きている状態や、慢性化した痛みに対しては、セルフケアだけで根本から改善するのは難しいことも事実です。「2週間ストレッチを続けたけど変わらない」「走るのをやめたら痛みが引いたが、再開するとすぐ戻る」という状態は、もう一歩踏み込んだアプローチが必要なサインです。
ここまで読んでいただいてわかるように、アキレス腱の痛みを引き起こす原因はひとつではありません。使いすぎが原因の方もいれば、足のかたちに問題がある方、体全体のバランスが崩れている方、複数の要因が重なっている方もいます。
同じ「かかとが痛い」という症状でも、その方の体の状態によって、改善するためのアプローチはまったく違います。原因がわからないまま「なんとなく安静にしていれば治るだろう」と待っていても、根本の問題が残ったままでは再発を繰り返すことになります。
当院では、関節・筋肉・神経・姿勢・歩行の5つの視点から丁寧に検査を行い、その方のアキレス腱の痛みが本当にどこから来ているのかを見極めることを大切にしています。検査の結果をお伝えしながら、「なぜ痛みが出ているのか」を一緒に理解していただくことを心がけています。
軽度の炎症であれば、十分な安静と適切なケアで回復することもあります。しかし、何週間も痛みが続いているケースや、休んでも走り始めるとすぐ再発するというケースでは、腱の内部で変性が進んでいる可能性があります。安静にするだけでは変性した組織は元に戻りません。早めに専門家に診てもらうことをおすすめします。
湿布や痛み止めは、炎症による痛みを一時的に和らげる効果があります。ただ、これらはあくまでも「症状を抑える手段」であって、痛みが起きている原因そのものを解決するものではありません。湿布で痛みが引いたからといって、そのまま運動を続けると症状が悪化するリスクがあります。
すべての運動をゼロにする必要はないケースがほとんどです。ただ、痛みを我慢しながらの運動継続は避けるべきです。どんな動きなら負担が少ないか、どの程度の強度なら続けられるかは、体の状態によって異なります。「どうしても練習を続けたい」という気持ちはよく理解できますが、無理をして慢性化や断裂につなげてしまうのは本末転倒です。
アキレス腱炎は腱に炎症が起きている状態で、痛みや腫れが主な症状です。アキレス腱断裂は腱が完全に切れた状態で、「バチン」という音とともに激痛が走り、その後歩けなくなります。アキレス腱炎を放置して変性が進むと断裂のリスクが高まるため、早期の対処がとても重要です。
アキレス腱が痛くなる理由は、使いすぎだけでなく、ふくらはぎの硬さ、足のかたちのくせ、シューズの問題、加齢による変化、体全体のバランスの崩れなど、実にさまざまです。そして、それらが複合的に重なって症状を引き起こしていることがほとんどです。
「走り始めだけ痛い」「朝の最初の一歩がつらい」「しばらく経ったら和らぐ」という状態が続いているなら、それは体からの大切なサインです。痛みを無視して続けることで、症状が長引いたり深刻化したりするリスクがあることを、ぜひ頭に入れておいてください。
30年以上、多くの患者さんのかかとや足の痛みと向き合ってきた経験から言えるのは、「原因をきちんと把握することが、回復への一番の近道である」ということです。同じ「かかとの後ろが痛い」でも、その方の体の状態によって必要なアプローチはまったく異なります。
ひとりで抱え込まず、気になることがあればいつでも気軽にご相談ください。あなたの体のことを一緒に考えさせてください。
【監修:柔道整復師・鍼灸師 表川大樹】



