
院長:表川お気軽にご相談ください!

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こんにちは、滋賀県守山市にある大樹整骨院院長の表川大樹です。
膝が痛くて病院に行ったら「注射を打ちましょう」と言われて、本当に効くのかな、副作用は大丈夫かなと不安になったことはありませんか。実は最近、膝への注射治療について世界中の研究者が調べた結果が発表され、その効果について新しいことがわかってきました。
膝への注射といえば、多くの整形外科で行われているヒアルロン酸注射が有名です。でも注射を打ち続けているのに痛みが良くならない、かえって不安が増してきたという方もいらっしゃいます。今回は膝の痛みに対する注射治療について、世界中の研究結果をもとに、わかりやすく説明していきますね。


研究結果を知った上で、自分に本当に合った治療法を一緒に考えていきましょう
変形性膝関節症という病気は、膝の軟骨がすり減って痛みが出る状態のことです。世界中で5億人以上の人がこの病気に悩んでいます。日本でも50歳以上の方に多く、階段の上り下りや長時間歩くことがつらくなってきます。
病院では主にヒアルロン酸注射とステロイド注射という2つの注射が使われています。
ヒアルロン酸は関節の中にもともとある成分で、関節液という液体の中に含まれていて、膝がスムーズに動くための潤滑油のような役割をしています。年齢を重ねるとこのヒアルロン酸が減ってしまうので、注射で補おうというのがヒアルロン酸注射の考え方です。
通常は週に1回のペースで5回程度続けることが多く、保険が適用されるため費用の負担も比較的軽くなっています。
なぜ多くの病院でヒアルロン酸注射が使われているのでしょうか。
それは手軽に受けられて、痛みが和らぐことがあるからです。特に変形性膝関節症の初期から中期の段階では、手術をする前に試してみる治療法として位置づけられています。
実際に注射を打って痛みが楽になり、歩くのが少し楽になったという声もあります。手術はしたくないけれど何か治療を受けたいという方にとって、選びやすい治療法といえます。
2022年に医学界で非常に権威のあるBMJという雑誌に、重要な研究結果が発表されました。カナダの研究チームが世界中で行われた169の研究、合計21,163人のデータを集めて分析したのです。
このような多くの研究をまとめて分析する方法を「メタ解析」といい、とても信頼性の高い方法とされています。
その結果、ヒアルロン酸注射は偽の注射(プラセボ)と比べて痛みを減らす効果はわずかで、臨床的に意味のある差はほとんどなかったことがわかりました。痛みを測る尺度でいうと、100mmのものさしでたった2mmしか差がなかったのです。
また、注射を受けた人の方が副作用のリスクが1.49倍高いという結果も出ました。
一方で、2025年に発表された別の研究では、軽度から中等度の変形性膝関節症の患者さんには効果があるという結果も報告されています。つまり膝の変形がまだそれほど進んでいない段階では、ヒアルロン酸注射で痛みが和らぐ可能性があるということです。
また、1回だけでなく複数回注射を受けた患者さんの方が、効果が続きやすいというデータもあります。ただし重度に変形が進んだ膝に対しては、効果が限定的だということも同時にわかってきました。
ヒアルロン酸注射の効果がどれくらい続くかは、人によって大きく違います。一般的には数週間から数ヶ月程度とされていますが、最初は効いていたのに次第に効かなくなってきたという方が少なくありません。これは膝の変形が進んでいることや、注射だけでは根本的な原因に対処できていないことが考えられます。
ある研究では、高分子量のヒアルロン酸を1回注射した187人の患者さんを12ヶ月間追跡調査したところ、痛みと機能の改善が続いたという報告もあります。しかし、この効果も個人差が大きく、すべての人に当てはまるわけではないのです。
注射で一時的に痛みが和らいでも、膝に負担をかけ続ける生活習慣や体の使い方が変わらなければ、痛みは繰り返し現れてしまいます。例えば骨盤が傾いていたり、歩き方に癖があったりすると、立ったり歩いたりするときに膝へ不均等な負担がかかります。
当院に相談に来られる患者さんの中には、何年もヒアルロン酸注射を続けているのに改善しないという方がいらっしゃいます。このような場合、注射以外のアプローチで体全体のバランスを整えることが重要になってきます。
どんな治療にもメリットとデメリットがあります。ヒアルロン酸注射は比較的安全とされていますが、知っておくべきリスクがあります。
最も多いのは注射後の一時的な痛みや腫れです。針を刺すことによる刺激や、薬が関節内に入ることでの違和感が数日続くことがあります。また、非常にまれですが関節内に細菌が入って感染症を起こすリスクもあります。注射部位が赤く腫れたり熱を持ったりした場合は、すぐに病院を受診する必要があります。
ヒアルロン酸注射を何年も続けることについては、医学界でも意見が分かれています。
一部の研究では、繰り返しの注射が関節内の環境に影響を与える可能性が指摘されていますが、明確な結論は出ていません。ステロイド注射については、短期的には強力な効果がありますが、頻繁に使用すると軟骨や腱を弱くする可能性があるため、年に数回程度に制限されています。
前述のBMJ誌の研究では、ヒアルロン酸注射を受けた人の3.7%に重篤な副作用が起きたのに対し、偽の注射を受けた人では2.5%だったと報告されています。この差は統計学的に意味のあるものでした。
最近、PRP療法という新しい注射治療が注目されています。PRPとは「多血小板血漿」の略で、自分の血液から血小板を濃縮したものを膝に注射する治療法です。血小板には傷を治す成分がたくさん含まれているため、膝の組織の修復を促す効果が期待されています。
日本で行われた研究では、変形性膝関節症の患者さん182膝にPRP療法を行ったところ、痛みのスコアが平均で10点満点中3.0〜3.8点まで改善したと報告されています。また、別の研究では治療1年後に59%の患者さんで治療効果が認められました。
PRP療法の最大の特徴は、自分の血液を使うため安全性が高いことです。また、ヒアルロン酸注射よりも効果が長く続く傾向があり、6ヶ月程度効果が持続するというデータもあります。ただし保険が適用されないため、費用が高額になるというデメリットがあります。
研究によると、初期から中等度の変形性膝関節症により高い効果があるとされていますが、重度に進行した膝にも一定の効果が認められています。
世界中の研究で一貫して効果が証明されているのが運動療法です。コクランという世界的に信頼されている医学研究組織のレビューでは、変形性膝関節症に対する運動療法は痛みの軽減と機能改善に効果があることが示されています。
特に太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることが重要です。この筋肉が強くなると、膝への負担が減り、痛みが和らぐことがわかっています。また、体重が多い方は減量することで膝への負担を大きく減らせます。
ある研究では、集中的な食事療法と運動療法を組み合わせることで、膝への負担と炎症が大幅に減少したと報告されています。
ただし運動療法にも限界があります。2022年に発表された日本の研究では、進行期から末期の変形性膝関節症患者39名に対して3週間の入院運動療法を行った結果、膝の筋力や歩行速度は改善したものの、39名中10名が退院後8ヶ月以内に人工関節の手術を受けたと報告されています。
つまり、変形が重度に進んでしまった場合は、保存療法だけでは限界があるということです。だからこそ、早い段階から適切な対処をすることが重要なのです。
当院では30年以上の経験から、膝の痛みの背景には姿勢の崩れや歩き方の癖、筋力のバランスの乱れといった複数の要因が関わっていることを実感しています。膝だけを見るのではなく、関節、筋肉、神経、姿勢、歩行という5つの視点から評価することで、なぜその膝に負担がかかっているのかが見えてきます。
もし今、医師から注射治療を勧められているなら、それを受けること自体は決して悪い選択ではありません。痛みが強くて日常生活に支障が出ているなら、まずは痛みを和らげることも大切です。
ただし注射を受けるにしても、それだけに頼り続けるのではなく、並行して運動療法や体全体のバランスを整える治療に取り組むことをお勧めします。注射で痛みが和らいでいる間に、筋力トレーニングやストレッチ、姿勢の改善に取り組むことで、膝への負担を減らし、注射の効果をより長く保つことができるのです。
膝への注射治療について、世界中の研究結果をもとにお伝えしてきました。ヒアルロン酸注射は広く行われている治療法ですが、大規模な研究では効果が限定的であることが示されています。一方で、軽度から中等度の変形性膝関節症には一定の効果がある可能性も示唆されています。
PRP療法という新しい注射治療も選択肢の一つですが、費用が高額であることは考慮が必要です。そして何より重要なのは、運動療法が科学的に効果が証明されている治療法であるということです。注射だけに頼るのではなく、体全体のバランスを整え、筋力を維持・向上させることが、長期的な改善につながります。
当院では問診から検査、施術まで院長である私が一貫して担当し、患者さん一人ひとりの膝の痛みの根本原因を見極めます。注射を受けているけれど改善しない、手術を勧められているけれど迷っている、そんなお悩みを抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。
【監修】柔道整復師・鍼灸師:表川大樹



